施設警備員の仕事内容

ビルや商業施設、マンションの入口付近で見かける警備員の姿は、多くの方にとって馴染みがあるでしょう。施設警備員の仕事は、ただ「立っているだけ」というイメージが持たれがちですが、実際には施設内外の安全を守るため、幅広い業務に従事しています。

こちらでは施設警備員の仕事内容や魅力について紹介します。

施設警備員とは?具体的な仕事内容

施設警備員の仕事内容

警備業法では「1号業務」に分類される施設警備員は、オフィスビルやマンション、商業施設、さらには公共施設や空港など、人が集まる場所での安全を確保する職種です。火災や盗難、不法侵入といったトラブルを未然に防ぎ、施設利用者が安心して過ごせる環境を守ることが主な仕事です。

施設警備員の業務内容は、「巡回警備」「立哨業務」「入出管理業務」「監視業務」の4つに大きく分けられます。それぞれの業務について具体的に見ていきましょう!

巡回警備

巡回警備は、施設内外を回って異常がないかを確認する業務です。不審者や不審物がないかをチェックするほか、設備の破損や火災の原因となる箇所がないかも確認します。施設によっては夜間の巡回も行われ、深夜勤務の場合は割増賃金が支給されるため、収入アップを期待できる点も特徴です。

立哨業務

立哨(りっしょう)業務とは、施設の出入口などで不審者や不審物を監視する仕事です。警備員が出入口にいることで犯罪の抑止力となり、施設の利用者に安心感を与えます。

施設の「顔」として、訪問者に挨拶したり案内を行ったりすることも多く、警備員には礼儀正しさや柔軟な対応力が求められます。

入出管理業務

入出管理業務では、施設を訪れる人や車両の出入りを確認し、不審者や危険物の侵入を防ぎます。具体的には、社員証や入館証の提示、アポイントの確認を行い、必要に応じて手荷物検査なども行います。人と接する場面が多いこの業務では、基本的な接客スキルやコミュニケーション能力が求められます。

監視業務

監視業務は、防犯カメラや防災機器を用いて施設の安全を守る業務です。警備室のモニターで不審な行動や異常がないかをチェックし、問題が発生した場合には迅速に対応します。

この業務では、洞察力や冷静な判断力、機器に関する知識などが求められますが、日々の業務を通じて自然とスキルが身に付いてくるので、未経験の方でも心配しすぎる必要はありません。

施設警備員の年収はどれぐらい?

厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「jobtag」によると、施設警備員の年収は【376.1万円】となっています。

地域別に見る施設警備員の年収

「求人ボックス 給料ナビ」によると、地域ごとの施設警備員の年収は下記の通りでした。

北海道・東北306万円
関東336万円
甲信越・北陸323万円
東海379万円
関西337万円
中国327万円
四国331万円
九州・沖縄315万円

※2025年1月調査時点
※参照元:求人ボックス 給料ナビ 「施設警備の仕事の年収・時給・給料」(https://xn--pckua2a7gp15o89zb.com/施設警備の年収・時給)

地域別で施設警備員の平均年収を比較した際に、最も年収が高かったのは東海地方の379万円です。東海地方のなかでも特に平均年収が高かった都道府県は岐阜県と静岡県の398万円で、全国的にも高い水準となっています。一方で、最も給与水準が低かった都道府県は山形県です。山形県の平均年収は265万円で、岐阜県とは133万円も平均年収に差がある結果となりました。

年齢別に見る施設警備員の年収

厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「jobtag」によると、施設警備員の年齢別の年収は下記の通りでした。

20歳〜24歳351.11万円
25歳〜29歳407.05万円
30歳〜34歳426.76万円
35歳~39歳448.26万円
40歳〜44歳457.97万円
45歳~49歳474.38万円
50歳〜54歳431.46万円
55歳~59歳394.14万円
60歳〜64歳315.43万円
65歳〜69歳269.53万円
70歳〜249.79万円

※2024年12月調査時点
※参照元:厚生労働省 職業情報提供サイトjobtag 「施設警備員」(https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/241)

施設警備員の年収を年齢別に見たときに、最も年収が高かったのは45歳~49歳の474.38万円でした。45歳~49歳までは年齢が上がるにつれて年収も増加し、50歳以降は年収が下がっていく傾向にあるようです。年齢によって年収がアップする理由としては、勤続年数が影響していると考えられます。経験年数が豊富なベテランのほうがスキルもあって会社からの評価も高いため、給料アップにつながりやすいのでしょう。

施設警備員として働くメリット・魅力

施設警備員として働くメリット・魅力

体力的な負担が比較的少ない

施設警備員の主な仕事は入退室管理や巡回、防犯カメラによる監視などで、ほかの警備業と比較して体力的な負担が少ないのが特徴です。また、機械警備業務に移行しつつあるため、一定の体力が求められる夜間の巡回警備でなければ体力に自信がない方や定年後のシニアでも続けられます。

未経験からでも始めやすい

施設警備員は未経験者歓迎の求人も多く、採用するうえで経験や資格を問われないことがほとんどです。採用後は警備業法に基づいた研修が義務付けられているので、施設警備についての知識がそれほどなくても問題ありません。未経験からでも始めやすいため、若年層から中高齢者まで幅広い世代が施設警備員として働いています。

待遇が良い

施設警備員は正社員や契約社員として雇用されるケースが多く、アルバイトに比べて安定した収入を見込めます。企業によっては福利厚生も充実しており、宿泊施設やアミューズメント施設を安く利用できることも。収入や福利厚生を重視したいという方には、魅力的な仕事と言えるでしょう。

プライベートと両立しやすい

施設警備員は基本的にシフト制で、さらにシフトの融通が比較的利きやすいといったメリットがあります。プライベートの時間を確保しやすいので、趣味や家族との時間を大切にしたい方におすすめ。また、ほかの仕事と掛け持ちしながら働くこともでき、自分に合った働き方を選びやすいも魅力です。

施設警備員として働くデメリットはある?

生活リズムが乱れやすい

施設警備の仕事は日勤や夜勤に加え、施設によっては24時間勤務があります。勤務時間が一定ではないので、生活リズムが乱れやすいのがデメリットです。

現場によって忙しさが変わる

施設警備員の仕事は、担当する施設によって忙しさが変わってきます。座りながら監視カメラをチェックする現場もあれば、施設内の巡回や立ったまま監視を行うことあるため、現場によっては体力的につらいと感じることもあるでしょう。また、警備体制や企業によっては24時間勤務が発生する場合もあるので、短時間勤務を希望する方は勤務時間の確認が必要です。

土日や祝日の休みが取りにくい場合がある

休日が繁忙期の施設の場合、土日や祝日の休みが取りにくいこともあります。ただ、そういった現場は平日であれば休みを取りやすいので、土日や祝日の休みにこだわらない方であれば、シフトの融通が比較的利きやすいといったメリットは変わりません。

施設警備員に向いている人とは?

昼夜逆転の生活に慣れている

施設警備の仕事の多くは、三交代制や24時間勤務などの勤務体制を採用しています。人間の体は昼に活動して夜は休むようにできているため、夜勤だと生活リズムが乱れて体調を崩してしまうことも。夜勤のある仕事で働いたことがあるなど、昼夜逆転の生活に慣れているという方は施設警備員に向いています。

長時間拘束が苦じゃない

施設によっては24時間体制や48時間体制の警備を取り入れており、仕事の拘束時間がどうしても長くなります。通しで働くわけではありませんが、施設内の仮眠室や警備室で仮眠や休憩をとるため、どこでも寝られる、仕事で長時間拘束されるのが苦にならないという人でないときついと感じてしまうかもしれません。

正義感や責任感が強い

施設警備員は、施設と施設利用者の安心と安全を守るのが仕事のため、人によっては負担に感じてしまうことがあります。自分の仕事が施設と利用者の安心・安全につながると考えられる正義感や責任感の強い方であれば、やりがいを持って働けるでしょう。

集中力がある

施設警備の仕事はルーティンワークになりやすく、長時間拘束されることもあるため、集中力が途切れてしまうことがあります。ただ、集中力の途切れによってトラブルにすぐ対応できなかった場合、大きな事故につながってしまう可能性も。ルーティンワークや長時間の拘束がある環境でも集中力を維持できる方は、施設警備員に向いています。

施設警備員の1日の流れ

施設警備員の業務は、オフィスビルや商業施設、工場、病院などの施設内で安全を確保することです。日勤・夜勤のシフト制が一般的で、それぞれの勤務形態によって業務内容が異なります。ここでは、日勤の基本的な流れをご紹介します。

8:30~9:00 出勤・業務開始

朝、指定された施設へ出勤します。直接現場に向かうことが多いですが、企業によっては警備会社に立ち寄り、必要な装備を整えてから現場に入る場合もあります。

出勤後は、前勤務者からの引き継ぎを受け、施設の状況や当日の特記事項を確認。制服に着替え、無線機やキーセット、巡回チェックリストなど必要な備品を揃えます。

10:00〜12:00 午前の業務

まず、施設内外の巡回を行い、建物の異常がないか、出入り口や非常口が適切に施錠されているかを確認します。

巡回が終わると、施設の出入り口で来訪者の対応を行います。来訪者の身分確認や入館手続き、関係者への連絡などを担当し、必要に応じて施設内の案内も行います。商業施設では、利用者から道案内を求められることも多く、柔軟な対応が必要です。

そのほか、防犯カメラの監視や緊急時の対応なども業務に含まれます。万が一の事故が発生した場合は現場に駆けつけ、必要に応じて関係部署や警察・消防と連携します。

12:00~13:00 昼休憩

警備員同士で交代しながら昼休憩を取ります。昼食は、施設内の指定された休憩室や社員食堂、または警備員専用の休憩スペースで取ることが多いです。

13:00〜16:00 午後の業務

午後も引き続き、巡回や出入管理を行います。

施設によっては、業者や来訪者の出入りが増える時間帯もあります。たとえば、オフィスビルでは午後に来訪者が増えるため、受付業務が忙しくなりがち。商業施設では、午後から夕方にかけて利用者が増えるため、防犯対策として巡回の頻度を上げることが求められます。

16:00〜17:00 施錠・夜間体制への切り替え準備

夕方になると、施設の一部エリアの施錠や夜間体制への切り替え準備が始まります。

施設ごとの閉館時間に応じて、エントランスや出入り口の施錠、館内の確認を行い、異常がないかをチェック。オフィスビルでは、特定のフロアや会議室の施錠を確認し、関係者以外が立ち入らないようにします。

17:00~18:00 業務報告・引き継ぎ・退勤

業務が終了したら、日報を作成し、施設管理者や警備会社へ報告を行います。その日の異常の有無、来訪者対応の記録、特記事項などを記録し、次の勤務者にスムーズに引き継げるようにします。

退勤前には、最後にもう一度巡回を行い、施設の安全を確認します。その後、防災センターや警備室で最終確認を行い、上司や責任者に報告をして退勤となります。

夜勤の場合

施設によっては夜間の警備業務が必要な場合もあります。夜勤では、来訪者の対応はほとんどなく、施錠確認や夜間巡回がメインの業務です。勤務時間が長時間に及ぶ場合は、仮眠時間が設けられていることもあります。

夜勤の終わりには、日勤担当者への引き継ぎを行い、夜間の状況を報告。朝の巡回で異常がないことを確認した後、退勤となります。

未経験からチャレンジできる
施設警備員以外の警備の仕事

交通誘導警備員

工事現場や商業施設の駐車場、道路工事の現場などで、車両や歩行者の安全を確保する仕事です。歩行者や車両を適切に誘導し、事故を未然に防ぐ役割を担っています。

交通誘導警備員の魅力は、短期間でしっかり稼げる点です。日払い・週払いが可能な会社も多く、働いた分の報酬をすぐに受け取ることができます。

特別な資格がなくても始められるため、未経験の方でもチャレンジしやすいのも魅力の1つ。短期やスポット勤務も多く、ライフスタイルに合わせて働きます。

イベント警備員

イベント警備員は、ライブやフェス、スポーツ大会などの会場で、来場者の案内や誘導を担当する仕事です。入場ゲートでのチケット確認、会場内の巡回、不審物のチェック、緊急時の誘導など、幅広い業務を担当します。

さまざまなイベントの舞台裏を支えられるのがイベント警備の魅力。音楽が好きな方やスポーツに興味がある方にとっては、楽しみながら働ける機会が多いでしょう。また、単発や短期の仕事が多いため、副業としても人気があります。未経験でもしっかり研修があるため、安心してスタートできる仕事です。

商業施設で働く施設警備員の仕事内容

ショッピングモールやデパート、大型スーパーなどの商業施設には、毎日たくさんのお客様が訪れます。そんなにぎやかな場所で、お客様の安心・安全を支えているのが「施設警備員」です。主な業務は、館内の巡回や出入管理(関係者や業者の受付対応)、トラブルや体調不良が発生した際の対応など、多岐にわたります。

商業施設の警備は、体力的な負担が比較的少なく、未経験からでも始めやすい仕事のひとつです。シフトも安定しやすく、天候に左右されることもないため、のんびり働きながら安定した収入を得たい方にも人気があります。

施設警備員におすすめの資格「施設警備業務検定」とは

施設警備業務検定は、警備業法で定められた国家資格のひとつです。

施設警備の仕事をするうえで資格は必須ではありませんが、取得しておくと待遇の向上や年収アップを期待できるなど、さまざまなメリットがあります。また、有資格者は現場でも重宝されるため、より良い条件で就職・転職しやすい点も、資格取得をおすすめしたい理由です。

検定には1級と2級があり、2級であれば実務経験がなくても挑戦できます。